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原作:ファイナルファンタジー6(FF6)
2002年製作
作:Rannunculus(脚本:ひのと 絵:悠悟)
レオ将軍を主人公とした、彼の最期を描いたストーリー。
主な登場人物:レオ将軍、ロック、ティナ、エドガー、セリス
レオ→ティナ、エドガー&ロック、ロック×セリス
第1章(ティナ)
どうして―?
どうして―?
目の前の光景は他人の目を通しているもののように見えた。
モノクロの世界で、何かの悪い夢を見ているのではないか?
何も考えられなくなった頭の中は、たった一つの言葉が占めていた。
どうして―?
自分は何を間違ったのだろうか。
何がいけなかったのだろうか?
戦争を止めようと思った。
そのためにここに来たはずだった。
暴走した幻獣と和解するために自分の力が必要だと言われた。
自分にしかできないと思った。
人を守るという事がどういうことかよく分からなかったけれど、
愛するという事がまだよく分からなかったけれど、
何も分からなかった自分を
守ってくれた、認めてくれた、必要としてくれた、
大切な仲間達―。
世界は辛い事ばかりじゃない、
自分のこの力は戦争の道具だけじゃない、
人を守る事もできると、
希望を教えてくれた仲間達のためなら
この力をいくらでも使ってよかった。
今度こそ、人を守るためにこの力を使いたかった。
そう思ったから。
それができると信じたから。
幻獣達も分かってくれた。
誰もが平和を望んでいると。
平和は…すぐそこだったはずなのに。
それなのに。
それなのに、これは…これは、何…?
また一体、幻獣が魔石化した。
また一人、人が死んだ。
幻獣の咆哮と人の絶叫が渦巻いている。
耳鳴りみたいに耳の奥にこびりついた。
自分の視界に端に、一筋の蒼白い閃光が奔ったのが見えた。
その一瞬後に、すぐ側の家が吹き飛んだ。
血が、炎が押し寄せてくる。
何が起きているの。
わからない―。
わからない―!
「ど…して…―!」
喉に貼りついていた声をようやく出してみても、
また、悲鳴に掻き消された。
第2章(レオ)
確かに葬り去ったと思ったケフカは幻だった。
その上、ガストラ皇帝の幻影にも気がつかなかったなど、
滑稽もいいところだ。
剣士でもない狂った男に刺されて、自分は今死にかけている。
呆れ果てて自嘲しか出て来ない。
腹からどくどくと血が流れ出ていくのがわかる。
指先一つまともに動かすことはできない。
体中が焼けつくように痛んだが、不思議と意識ははっきりしていた。
その意識の中で思う。
守るべきものは何だったのか。
「ティナ…」
視線を巡らすとすぐに見つかった。
誰も踏み入れたことのない、
静謐な朝焼けのような紫の瞳を見開いて茫然としている。
ああ…。
ああ―私はまた傷つけた。
優しく、壊れ易い、繊細なガラス細工のような心をまた、
守ることができなかった。
彼女の心ひとつ、私は守ることができないのか。
傷つけたまま、終わってしまうのか。
彼女を、私では守れないのか。
彼女一人、守り切ることもできないのか。
否。
ティナ。
お前には何もしてやれなかったけれど、
この場だけでもお前を守って見せるから。
今度こそ守って見せる。
それぐらいしか、お前にしてやれないから。
この場からお前を守ったのが私だと―自惚れさせてくれ。
ケフカの高笑いが聞こえる。
狂ったその笑い声が脳裏に響いた。
そして振り向く。
ティナと目が合う。
邪悪な笑みが深まった。
守らなければ、私が。
今度、こそ。
「これはこれは。貴方のおかげで幻獣が集まったのですか。
これ以上魔石も必要ないですし…もう用済みですよ。
死んで頂きましょうか。」
ティナは無反応だった。
ケフカの声も聞こえてはいまい。
早く、早く…!
なんとか地面に手をついて、身体を持ち上げようと試みた。
力が入らないなどと思っている暇はない。
渾身の力を振り絞って顔を上げると、
彼女の仲間の一人が叫んでいる姿が見えた。
その男、ロックが左半身を血に染めて
―セリスを庇ったときに追ったのであろう―
それでもティナを守ろうと身体を引きずって近づいていくのが見えた。
ああ…大丈夫だ。
それを見て、私はひどく安心した。
きっと彼女達は、仲間の元で幸せになれる。
最期に安心できてよかった。
ティナとセリス…帝国に心も身体もずたずたにされた彼女達が
ずっと気がかりだった。
自分は傷つけたまま死ぬが、
その傷を癒すことなどできはしないが―
それでもその傷は仲間達の元で癒されるだろう。
ケフカが側にいた魔導アーマーに乗っている兵士を呼んだ。
ガシャガシャとアーマーの動く振動が身体に響く。
早く、早くしなければ。
もう少し、もう少しだけ動いてくれ。
彼女を守れたら、そうしたら…死神にこの身体をくれてやろう。
どんな死でも受け入れる。
そう考えて、
震える足を踏み出して、
ふと、私は嘲笑った。
裏切られて死ぬ―何とも自分にふさわしい死だ。
自分に嘘をつき続けて迷った挙句の死。
今更こんな死に何の感慨も浮かばないが、
最期の最期に大それた望みを持ってしまった。
誰かを守って死ぬ―そんな甘美な望みを。
足を動かす度に身体がぐらついた。
何度も崩れそうになる。
視界もかなり怪しかったが、
それでもティナの姿だけははっきりと捉える事ができた。
その姿がだんだんと近づく。
ニ度、私は自身を嘲笑った。
何だ―私も随分とエゴと欲望の塊ではないか。
今の今まで自分が嫌悪していたあの狂人と、いったい何が違うのだ。
命を賭して彼女を守ろうなどと。
彼女に自分を刻み付けようなど。
裏切られて、無様に腹を刺されて終わりだった自分の滑稽な最期を、
自分で変えようとしている。
彼女の中に自分の死に様を、殊更に見せつけて。
おそらく彼女は忘れないであろう私の死に際を―私はそれに満足するのだ。
狂った男に刺されて死にました、ではなく、
私を守って死にました、に変えられる。
だから。
「ティナ、逃げろ!早く!」
ロックがその端麗な顔を歪ませて駆け寄った。
ティナを守るのは―。
「ロック!ティナ!」
セリスの切羽詰った声が聞こえた。
また一歩、私は踏み出す。
誰の物かわからない剣を拾って。
魔導アーマーが動く。
ケフカの高笑いが響いた。
急に身体が軽くなるのを感じた。痛みも吹き飛ぶ。駆け出す。
ティナを、守る、のは―。
「ティナ!」
ロックがティナを庇うように覆い被さった。
ちがう。
ちが、う。
お前じゃない。
お前には譲らない。
散弾銃が鳴り響いた。
私の意識は真っ白だ。
眸の奥に、夜が明ける寸前の静謐な、鮮やかな空が焼きついた。
剣を振り上げる。高く掲げて。
そして。
「ショック―」
小さく呟いた。
ティナを、
ティナを守るのは
この、私だ―。
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